DX推進の現場に広がる誤解と、DXに到達するために必要なもの
近年は社内外のデジタルトランスフォーメーション(DX) を推進、支援する仕事をしている。
いろいろな業種の方と話をする機会が増えたが、現場ではまだDX への誤解が広がっているように思う。
DX したいということで話を聞いてみると、古いシステムを入れ替えたいという内容であったり、DX しましたということで話を聞いてみると、手作業だったものをRPA を導入して自動化したという内容だったりする。
なぜDX への誤解が広がったのか
そもそもデジタルトランスフォーメーション(DX) とは
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:経済産業省 デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン
の定義とされているが、これと2025年の崖の話が合わさって、古いシステムは維持コストが高額になる→システムを刷新しないと生き残れない→システム刷新すれば新しい技術=デジタル技術だからDX は達成するになったのだと推測する。
システム刷新だけでは、なぜDX にならないのか
現場は非常に危機感を抱いている。そのうえで古いシステムを刷新したり、自動化したいということで、もちろんそれらはとても素晴らしい。
しかし、いまの業務そのものに疑問をもってプロセスや組織そのものを改善できないか検討していなかったり、自動化して空いた時間で何をするか検討がなされていないケースが多い。
そうなると、変化し続ける環境に変革することで適応し続けるという風土が育たない。一時的な効率化は起こるが、業務、組織、プロセスの変革が起こらず、その後が続かないためDX にならないのだ。
なぜそうしたいのか、どうしたいのか、その結果どうなるのか。必要なのは組織のビジョンだ。それらを描いてから、変革する上で必要なパーツとしてデジタルを活用すればいい。
重要なのはトランスフォーメーション。デジタルはあくまで手段に過ぎない。
もちろんデジタル自体は、変化し続ける状況をウォッチして判断することへの親和性が高いので、それを否定するつもりはない。
DX の本質を知る
DX とはこういうものかと腹落ちさせてくれた本がある。
ここでは信用スコアという、デジタルによって人々の行動が変化し良くなった中国の事例が紹介されている。
デジタルによって人々の行動を変え、社会をより良いものに変える。これこそがデジタルトランスフォーメーション(DX) の本質だと思う。
もちろんこの事例は監視社会のようなディストピアに陥る危険性もあるし、取り巻く環境やスケールが違うという点もあるが、それでもDX を目指す上で、デジタルを活用して変革するとはこういうことかと非常に参考になる。
また、この本ではその他にもオンラインとオフラインの考え方、顧客との接点をどう考えるのかなどDX に至るためのヒントが多数散りばめられている。DX を推進する上ではぜひ読んでおいてほしい。
まとめ
デジタルトランスフォーメーション(DX) 推進の現場ではまだ誤解が広がっている。
その誤解を解くために、まず必要なものは組織のビジョンだ。そしてそのビジョンに到達するために、どのようにトランスフォーメーションして、デジタルをどう用いるか。この順序が重要だと私は思う。
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